ゲートボール場のベンチでうとうとしているうちに、不意に「おにいちゃん」と声をかけられた。目を開けるとそこには初老の老人がたってこちらをのぞき込んでいた。私は少々寝ぼけていたのか、第一声で「今、何時ですか。」と聞いてしまった。おじさんが5時だよと言ったとき、急に現実に戻された。よく見るとまわりにはジャージ姿の多くの老人がいる。朝の5時を過ぎたばかりだというのに彼等の一日はすでにスタートしていた。
このまま、ここで眠るのは不可能だとさとり、宇田川をお越しに、公民館のひさしのところまで行った。事情を話し、もう出発することになった。その間際、おじいさんにお茶をごちそうになった。 あったかかった。
今日は絶対に延岡まで行こう。時間が有れば、電車で高千穂まで行こう、ということになった。もちろん、海岸線は通らず内陸を延岡に向けて直進だ。津久見を出てすぐに、すこし峠を登ったところから臼杵湾から日の出を眺めた。この旅では、全体的に朝は決して早くはなかったので、ここで見た朝日が最初で最後であった。すばらしい朝日であった。
確かに道はそれほど緩やかなものではないのだが、まわりを自然に囲まれて、 横にはきれいな川が流れている、とても国道とは思えないほど気持ちの良い道であった。それにしても、脇の川は透明度もすばらしく、走りながら心の中で、いつこの川に飛び込もうか、とずっと考えていた。宇田川も同じ気持ちだったに違いない。そして、県道にそれる道から、川に入ることにした。しかし、川にはいるまでがなかなか大変で、茂みを越えて、靴を脱ぎ、川の流れで転びそうになりながら、なんとか中州の河原まで到着した。
私はビーチサンダルと海水パンツを持っていたので、何も問題はなかったが、宇田川は素足でサッカーで使うようなハーフパンツで川に入った。最初に胸までつかったのはこの私であるが、とても冷たかったがそれ以上に気持ちが良かった。私はなぜか、水中眼鏡まで持っていたので、それで川底をのぞくと、非常に多くの小魚か稚魚かが目の前に飛び込んできた。それにしても、川で遊ぶのは久しぶりである。少なくとも、中学高校ではそのような思い出は見あたらない。川遊びは面白い。おぼれて流される危険性は有るが、しょっぱくないし、透明度もあるし、魚も見られる。この川の真上、すなわち私たちの頭上を鉄橋が通っており、たまに電車がそこを走るのであるが、電車の中の人がうらやましげにこちらを見下ろしていたのが印象的であった。100%自然の川で遊ぶのがこれほど愉快なこととは思わなかった。
川遊びを十分に満喫した後、再び延岡に向かった。いい具合に リフレッシュすることができ、爽快に走ることが出来た。延岡に比較的早めに到着した。まだ、時間的に余裕があったので、延岡にあるヘルスセンターに行くことにした。ここでは、宿泊は出来ないのであるが、温泉だけでなくプールやマッサージなどがあるレジャー施設である。ところが、高千穂行きの電車(高千穂鉄道)は本数がそれほど多くないので、どうあがいても温泉にしかつかれない。ユースホステルも予約してしまったし。ここの温泉は、天然ではないが、回転風呂や、ジェットバス、ミストなどがある。こういう温泉は大好きなので、結構楽しめた。ところが、宇田川は海水パンツを買うといって売店をさまよっており、なかなか浴場に入ってこない。これじゃ、温泉にゆくっりつかれないじゃないかと、いらぬ心配まで抱いてしまった。彼は、しばらくしてから入ってきたが、私はそろそろ出ないと間に合わないぞと彼をせかした。先に温泉を出て、受け付けで待っていたがなかなかこない。まじでいい加減にしろよと思った。ようやく戻ってきたので、自転車で先を急いだ。ビーチサンダルにすでにはきかえていたので、非常に運転しにくかった。
延岡の駅に到着。すでに高千穂行きの電車が入線していた。もう、時間がない。急いで切符を買おうと思ったが、なんと一人千数百円もした。R00円く らいですむと思ったいたので、唖然としてしまった。しかし、電車はもう出発してしまう。とにかく、宇田川に電車代を出してもらい、急いで電車に飛び乗った。所要時間は約1時間。観光客よりも、地元の学生やおばちゃんなどが多かった。普通のローカル鉄道である。しかし、山間に入っていくに従い、乗客少なくなってきた。途中、鉄橋や滝の見えるところで、電車はスピードをゆるめスピーカーから解説が聞こえてくる。結構、観光客に親切な鉄道である。それにしても景色がすばらしく、窓を開けて眺めると大変に気持ちが良かった。
高千穂の駅までユースの人に、車で迎えに来てもらった。夜飯を食べていなかったので、高千穂で唯一のコンビニでカップラーメンを買った。ユースのおにいさんの運転が恐かったことをよく覚えている。高千穂峡の見学は翌日に回すことにして今日はゆっくり休むことにした。 ところが、ユースのおにいさんに、高千穂神社でお芝居があるからと、誘ってくれた。 暇であったので行くことにした。天照大神にまつわるもので歴史もあるらしいのだが、 後ろのセットがやけにみみっちかった。最後には餅を投げてきた。これをとるとなにかとうれしいことらしいが、私のところには頭に直撃した物を含めて、5つほど投げてきた。味も何もなかったが、とりあえず食べておいた。ユースには、バイクでツーリングに来ているにいちゃんがいて、少し話した。 神社から帰った後、ユースの共同部屋でしばらく漫画を読んでいたが、非常に眠くな ったので、先に眠ることにした。めちゃくちゃ眠かったので、洗濯物の後始末も、宇田川に任せることにした。