この旅も3日目に入った。この日は今回の旅の中で一番爽快なものであったといって良い。なんといっても、御殿場から沼津までは下るだけ。箱根越えの苦労がここで報われるのである。
6時30分(イケモンは7時)に起き、仲間に別れを告げ7時30分にはユースを後にした。 朝飯前には沼津に行こうと決めていた。ここからは本当に気持ちよかった。平均時速30km以上で沼津に向かった。40km、50kmを超えるときもあったので、車道を走っていても違和感がなかった。特に制限時速40kmの道路を40km強で駆け抜けたときは何とも言えぬ満足感があった。しかし、イケモン車はスピードに対応する機種でなかったので、下り坂はいつも後れをとっていた。やはり、タイヤの直径の差が大きかったらしい。 この気持ちよすぎる下りを駆けているとき、俺にハプニングがおそった。
俺の愛用していた白の2600円もする帽子がとばされたのである。一瞬の出来事であった。これまでも何度か危機はあったが、そのたびに空中でキャッチしたりして危機を回避していただけに非常に悔しい思いをした。当時40kmを超えるスピードで疾走していたので、とても
止まるわけには行かない。涙をのんでその帽子をあきらめた。時間も忘れられぬ
午前8時30分の出来事であった。
沼津に着いたのは9時15分。その後市内に入り、ファミレスで朝食をとった。朝飯前に走るのは気持ちいい。しかも、ご飯がおいしく食べられる。これからもそうするか。 沼津からはそろそろ海もみたいと、海岸沿いの県道を通った。しかし、そこは有名な千本松原。松が邪魔で海が見えない。途中無性に海が見たくなって、松林を横断すると防波堤にぶつかってしまった。おいおいとは思いながら、イケモンが防波堤を越える。どうやらその上は自転車が通れるらしい。 これはいい。海を見ながらのサイクリングか。さっそく自転車を上に上げて100%海沿いの道を通ることができた。海岸ではつりをしているおやじが見える。
横はすべて海。太平洋の穏やかなうねりが我々を歓迎しているようだ。終始爽快な旅を続けていたが、ここで一つの問題が起きた。 こんな道を通っていたら飲み物が飲めん。そこは防波堤の上。コンビニはもちろん、自動販売機もない。水筒を持っていた俺はまだしも、なんと水筒を持参しないでこの旅に参加しているイケモンはグロッキー寸前だ。奴はとうとう防波堤を降り、自販機めざしてダッシュした。その後は何の問題もなく田子の浦に到着。そこで、多少迷ったが、歩道橋を発見し無事に切り抜けることができた。
再び1号線に乗り、富士川で休憩をとった。川岸で休もうとすると、向こう岸に一匹のビーグル犬を発見した。ふざけて呼び寄せるといきなり犬かきで川を横断して気やがった。犬かきを目の前で見たのは初めてだったので、少しうれしかった。しかし、奴はこちらに来てもにおいをかぐだけで愛想がない。そのうち飼い主の叫び声が聞こえた、これで犬も帰るだろうと思っていたのに、川を渡ろうとしない。それとも我々と離れたくないのか。
飼い主は我々にけっ飛ばしていいから川を渡らせろ、といってきた。そんなこと愛犬家の俺ができるはずがない。ためらっているうちに犬は買い主の投げた石に反応して、川を渡っていった。また、渡ってこられたら困るので、我々も現場を後にした。
そこから、三保までは清水を通ってすぐだった。この日も国道1号を利用したがやはりあの道路は恐ろしい。4時30分に三保に着いたが、三保というところは東海大学の庭のようなところであった。多くの付属研究所や博物館があり、東海大学のための三保という感じがした。三保のユースは御殿場とは違った。私のもっともきらいな海を好む軟派野郎との相部屋。(俺は一言も口を利いていない。)囚人食。大量のフランス人。俺はフランス人のガキに核兵器反対と捨てぜりふをはいておいた。
その夜、海岸でイケモンと語った。奴の性格は熟知しているので新たな発見はなかったが、どうやら普通のサラリーマンになるのは嫌らしい。しかし、結局サラリーマンとして一生を過ごしてしまう可能性が高いことを認めたのはなかなかおもしろかった。 やつは大きいことをやるほどの行動力がないのだ。2時間ほど語った後、部屋に戻ってさっさと寝た。その中でも、多少語りモードに入ったが、あまりに眠かっので、話題は広がらなかった。