1日目(8月10日) 新宿→横浜→藤沢→小田原
いよいよこの日が来た。天気は良かった。少し暑すぎるくらいだったと思う。待ち合わせは、鎌倉のときと同じで新宿駅小田急口。時間は朝8時。しかし、まわりの空気は8月2日とは違った。嵐の前の静かさか、何もかもが止まっているような気すらする。これから長旅をするという実感はなく、ずっしりとしたリュックをかついでもそれは変わら なかった。「いよいよだな。」鎌倉とは比べものにならない困難がこれからあるであろう。それを無理に打ち消そうとしている自分に、ある種の緊張感を植え付けようとしていた。つまり、その困難を再確認でもするように、俺は自分にカツをつけようとしていたのかもしれない。
7時40分をすぎた頃、俺は家をでた。リュックにつけたお守りにねがいをこめて。
新宿に着いたときイケモンはまだ来てなかった。またかよ。早く来い。そう思った瞬間彼は来た。おー。あのときとは違うな。いかにもな変な形の自転車にショートパンツ。ようやく彼もわかってくれたか。希望が見えてきた。これならいける。イケモンがまた、ままチャリできたらどうしようかと心配していたのだ。この後本来の予定では、都庁まで行き、そこから出発する予定であった。ところが、そこまでいってから道を間違えたらばかだなと考え、スタート地点を新宿駅に変更した。出発から0分後に早くも予定変更でる。この後が心配だなぁ。ルートは横浜を抜けて、平塚を通り、茅ヶ崎のユースホステルで一泊する予定である。
9時30分に神奈川県に入り、10時50分には横浜駅に着いた。横浜には思ったより全然早く着いた。鎌倉への試走はやはりよかったのか。都心を抜ければ後は国道を突き進めばよい。旅の中でおそらく最大の困難のひとつであろう、「東京、横浜越え」が成功しそうだ。そう思った瞬間、決して忘れられないミスを犯してしまうのである。 それは、保土ヶ谷に向かうときに起こった。国道15号から1号にはいったとき、道路脇にかかれた保土ヶ谷行きを示す小さい標識を見つけた。この道を直進するはずなんだけどなぁ。しかし、目前の情報に身をまかせ、我々は右折してしまった。その瞬間驚きべき光景が目に飛び込んできた。めちゃくちゃな坂である。「おいおい!なんじゃぁ、こりゃぁ。」だが保土ヶ谷に行きたい。行かなくてはならないのだ。その坂はおそらく今回の旅の中で最高級のものだった。箱根までは自転車を押さないで行こうと思っていた決意は早くも崩れた。少しこいだだけで汗がこみ上げていた。とうとう自転車を降りてしまう。300メートルほど押しただろうか。自動販売機とベンチが目に入った。休んだばっかりであったが、ここはもう休まざるを得なかった。そのベンチに座った瞬間再び我々に緊張が走った。前の道路に行き先表示板が見えた。「えっ。」その時、自分らの来た道が間違いであることに気付いた。さっきの道でよかったのか。でも、この道をまっすぐ行けば保土ヶ谷だし、その先は新横浜、新幹線に沿っていきゃいいじゃん。と考えてたので、再び地図を開いてみた。「げっ!」どうやらとんでもない道を通ってしまったらしい。新横浜の駅に行ったら、横浜よりも東京よりに行ってしまうではないか。この道が間違いと確信した瞬間我々は今度は下りとなるその坂をさっそうと下っていった。あの自動販売機で休まなかったら、とてもこの間違いには気付かなかっただろう。とりあえず良しとしておくか。
それからは大した道の間違いはしなかった。しかし、車の流れが多く速いので、車道を自由に走ることはまだ、困難であった。1号を進んだ。大坂下というバス停戸塚の手前にあったことが妙に印象に残っている。そのあと、その名の通り大坂があったのだ。思わず苦笑してしまったが、ここでもまんまと自転車を押してしまうのである。この時もまだ、ギアの使い方を知らない二人であった。 目的地は茅ヶ崎から、20kmほど進んだ小田原に変わっていた。茅ヶ崎のユースホステルがいっぱいであったのである。その後、藤沢市にはいったとき学校のある湘南台行きを示す標識が見え妙な気持ちになった。さすがに自転車通学はできなそうだ。小田原までのルート変更はなかなかきついものがあったが、初日の元気があるうちに距離を稼ぐのもいいな。気を取り直して二人は小田原に向かった。 茅ヶ崎から小田原は新宿から横浜とそんなに変わらないよりであったが、道が単純な分全然楽に進むことができた。そこからは何の問題もなく小田原までたどり着くことができた。
小田原駅に着いたときは、あたりは少し薄暗くなっていた。しかしここには、ユースホステルはない。自力で止まる場所を探すっきゃない。しかし、 一軒目はいっぱいあった。そこから10分ほど探しただろうか、駅前から少し離れたところに民宿を発見した。とりあえず中に入ってみる。おばはん二人がでてきた。いきなり、中学生と間違えられてしまう。そんなに幼く見えるか。まぁこの格好ならしょうがない。それより満員なのか?いくらなんだ?向こうはなかなかいわない。ひたすら我々に感心しているだけである。なんだかんだいったあと、いきなり6000円と言う言葉が聞こえた。うっ、ちょいと高いぞ。しかし値切りになれていない俺はすかさず5000円と言ってしまった。しまった!奴等の笑みは見過ごさないぞ。これが手だったのだ。素泊まりで5000円。た、高い。しかし、自分でいってしまった値段なので今更何も言えない。しょうがないここは我慢するか。そのかわり、風呂場で洗濯させてもらうよ。冷房もがんがんかけてやるぜ。夜10時過ぎにはとこに入った。その日はくしゃみが止まらなかった。
